臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平にとっては大して面白くないマンガだったのだが、お堅い本達が多い図書館では貴重な存在だったようで、ボロボロになっていた。


 康平は一冊読み終えた後、テスト勉強に来た目的を思い出して机に戻った。

 だが勉強を再開した途端、再び康平の脳が緊急停止した。

 机に戻った義理を果たすかのように問題を二問解き、再びマンガを読みに行った。

 別のマンガを一冊読み終える。

(俺何やってんのかな)

 自分に呆れながら机に戻ろうとした時、康平の椅子には女の子が座っていた。

 康平は、女の子の前をさりげなく歩いてチラっと見た。すると、彼女は突然口を開いた。

「ナーニやってんのかな君はぁ」


 一瞬ギクリとした康平だったが、声を聞いてすぐに誰だか気付いた。

 山口亜樹である。

 学校の制服ではなく、ジーンズに紺のTシャツだった。

 鼻筋がスーっと通った派手な顔立ちと、長身でスラッとした体系のせいか、地味な印象はない。

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