臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「高く付きそうだな」康平が苦笑した。

「いつもイジらせて貰っているお礼だから心配しないで。……あっちで話そうよ」

 二人は会話が出来そうなロビーへ向かった。そこにはジュースの自動販売機があり、康平は相談料でも払うかのように一本亜樹へオゴった。

 大人っぽい亜樹も、月の小遣いをやりくりする高校生である。素直に喜んだ。


 ジュースを飲みながら、康平は亜樹にブルーになった訳を話す。

 将来同じ階級で戦うかも知れない勇敢で強い友達がいる事。

 同じ学年なのに桁違いに強い奴がいる事。

 来年の今頃は試合に出るのだが、自分は戦えるか不安な事。



 亜樹は、さり気なく相槌を打ちながら真面目に話を聞いていた。


 十五分程、自分の事ばかりを話していた康平が、苦笑しながら言った。

「ワリィな。亜樹には関係ない事ばかりなのにな」

「気付いてくれた? ……ウソだよ」

 少し笑った亜樹が続けて話す。

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