臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「ゴメンね。相談に乗るって言ったけど何も出来ないみたい」

「いや、そんな事は無いぜ。亜樹に話してたらさ、まだボクシング始めたばかりなのに悩んでいるのがアホらしくなってきたよ」

「じゃあ、ジュース一本分の貢献はできたんだ。……でも、友達と試合したら殴れるの?」

「分かんねぇよ。なるべく試合はしたくないな」

 不安な表情で康平が言った。

「君は、ひとが良さそうだから心配だね」

「俺より亜樹の方が、ボクシングに向いているよ。言葉の暴力の攻撃的センスは大したものだぜ」

「ひっどいわね! でも私は攻撃して欲しそうな人にしか攻撃しないわよ」

「かなわねーよ。ところで亜樹は、期末テストまで一ヶ月近くあるのに勉強してんの?」

「私さぁ、家に近いって理由だけで高校選んだの。でも、入学したら急にいい大学に行きたくなっちゃったのよね」

「大学行って、何すんのさ?」

「まだ漠然としてるけどね。話は変わるけど、康平はいつもどこの図書館にいるの?」

「下田駅から近くの図書館だよ! あそこは家の近所だし、健太っていうダチと勉強してるよ」

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