臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
強くなりたかったら走れ
 大会が終わって二日後から、一年生達だけの練習が始まった。試合をした先輩達は、もう三日休む予定である。この日は梅田だけが練習に来ていた。

 一年生は、いつものメニューで練習をしていた。

 シャドーボクシングが終わり、サンドバッグ打ちへ移ろうとした時、突然梅田が竹刀を壁際に置いてサングラスを外した。

 そして梅田は四人に指示を出した。

「有馬はリングに上がれ。他の奴は、サンドバッグを打たないでシャドーを続けていろ」

 梅田は、ミットを嵌めながらリングに上がった。

 有馬もリングに上がった。少し緊張しているようである。


 開始のブザーが鳴った。だが、梅田はミットを構えないで有馬に説明した。

「いいか、俺との距離を一定に保て! 俺の動きに合わせてお前も動くんだ」

 梅田が下がり、有馬が前に出る。

「ダメだダメだ。いいか有馬、前に行く時は前足はつま先から着地しろ。そしてベタ足になる。……例外もあるが、今は基本の段階だ。つま先からの着地を徹底しろ! ……お前らもだぞ!」

 梅田に言われて、他の三人も真似をした。

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