臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 梅田はラウンドの終了ブザーがなるまで下がり続け、有馬に前進させた。


 次のラウンド、今度は梅田が小さく前に出る。有馬はそれに合わせてユックリと下がった。

 梅田が有馬に言った。

「下がる時は前足で蹴って大きく下がれ。最初は跳ぶような感じでもいいぞ。その後はすぐにパンチを打てる体勢を作るんだ。他の奴もやってみろ」


 リングの外にいる康平達も、有馬を真似てバックステップをした。


 梅田は三人の様子も見ている。そして全員に言った。

「いいか、バックステップをする時は中途半端に下がるんじゃねぇぞ! 踏み込みのいい相手だと打たれてしまうからな」


 このラウンドは全員前後のステップを繰り返した。


 三ラウンド目、有馬は梅田に合わせて左右に動く。

 これは四人共最初の頃に習っていた。右へ動きたい時は右足から、左へいく時は左足から踏み出していた為、梅田は何も言わなかった。

< 74 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop