臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 疲れた様子の有馬だったが、ミットで頭を叩かれたくないのか、無理をして深呼吸をした。


 三ラウンド目のミット打ちが終わった時、有馬は肩で息をしていた。だが梅田をチラっと見て、鼻での深呼吸に変えた。


 他の三人も、同じように三ラウンドずつのミット打ちを行った。

 そして白鳥と康平が一発ずつ、健太は二発を梅田からミットで頭を叩かれ、練習場に快音を響かせていた。

 一年生達は、どのパンチが当たるか分からない緊張からか、身体よりも精神的な疲労で参っているようだった。


 続けて合計十二ラウンドをミットで受けていた梅田は、汗を滴らせ鼻で深呼吸しながら言った。

「相手と戦う時は空振りも多い。空振りしてもいいように強く打つのが実戦的なパンチだ。分かったか?」

「はい」

 一年生達も、鼻で深呼吸しながら返事をした。


 その後の練習はサンドバッグ打ちへと続いたが、最後の柔軟体操が済んでようやく長い部活が終わった。

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