臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
スパーン!
その時梅田は、目にも止まらね早さで康平の頭をミットで叩いた。痛くはないが、ミット特有のいい音がした。そして梅田が言った。
「腕だけでブロックするんじゃねぇぞ。パンチを受ける瞬間、腰を下に押し付けながら体全体でブロックするんだ!」
五ラウンドのミット打ちが終わった。康平は両手をリングのロープに掛け、肩で息をしながらグッタリしていた。
「疲れた態度をするんじゃねぇよ!」
梅田の罵声が飛んだ。続けて全員に言った。
「お前らも練習中は、疲れた態度をするんじゃねぇぞ。ボクシングは誰も助けてくれる奴はいねぇスポーツだ。練習中は全てヤセ我慢しろ!」
四人は急に背筋が伸び、大きく開いた口は真一文字に綴じた。そして鼻で深呼吸をする。
その後、三人の一年生はそれぞれ五ラウンドずつ、梅田は十五ラウンドのヤセ我慢をする事になる。
全ての練習が終わり、帰る前に白鳥が梅田へ質問した。