臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 有馬と白鳥は既に準備運動を始めていた。

 永山高校のボクシング部は、他の部活と違って全員で声を出しながらの体操は全くしない。全員、各々で準備運動をしている。

 康平と健太は、準備運動が終わった事を梅田に伝えた。梅田は四人に言った。

「一年全員鏡の前に並べ」

 梅田が一人一人に利き腕を聞く。そして、それぞれの構えをつくっていった。

 右利きと答えた康平は、右半身が後ろの構えになった。有馬と白鳥も右利きだったようで同じ構えになる。左半身が後ろの構えになった健太は左利きだった。

 鏡の前で構えている四人を見ながら梅田がユックリと歩く。そしておかしな所を修正する。

 修正が終わり、四人の後ろを二往復した梅田が言った。

「次のブザーが鳴ったら三分間ずっと構えてろ。そしてブザーが鳴ったら休む。またブザーが鳴ったら三分間構える。それを十回繰り返す。分かったか?」

 一年生達は何も言わずに黙っていた。梅田が怒鳴る。

「返事はどうした! ボクシング以前に、挨拶と返事は人として基本なんだよ!」

「は、はい!」四人は慌てて返事をした。

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