臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 家に帰った康平はすぐに部屋へ戻り、目覚まし時計のアラームを朝五時と六時半にセットした。六時半は、普段康平が起きる時間である。

 明日の朝に走るか康平は決めかねていた。

 夜の十一時になっても彼はなかなか眠れず、明日の朝の事はどうでもよくなっていた。

(朝、五時に起きれたら走ろう)


 朝五時、康平は比較的大きな目覚ましのアラームで目が覚めた。

 梅田が、走るのはゆっくりでも短くてもいいような話をしていたので、康平は軽いジョギングを始める事にした。


 康平の家から、東は健太の家の方角で、北は裕也の家の方角である。

 彼は、ゆっくり走っているのを誰にも見られたくないので、南西の方角に向かって走り始めた。


 六月中旬のこの時期、朝五時でも明るい。

 バイクに乗って新聞配達をする人。

 朝の散歩をするお年寄り。

 見るからに健康の目的で走っているオジサン。


 擦れ違う人は少なく、通学時のせわしい感じはない。街全体がのどかなオーラを発している。

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