臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
三キロ程度のジョギングだった。朝走るのは初めての事だったので、康平は意外な程疲労を感じていた。
家に戻った後急いでシャワーを浴び、朝食と歯磨き、今日使う教科書の入れ替え等、いつもの通学前のノルマをこなしていく。
家から駅に向かう途中、康平は健太と出くわした。
お互い、『走る』という単語を避けながら話をする。健太が先に口を開く。
「……俺さぁ、今気になってるコがいるんだよ」
「えっ?」
「内海綾香ってコなんだけどな。同じクラスで、ハーフみたいで結構可愛いんだ」
「お前は俺より面白いし明るいムードを作れるから、お前次第でうまくいくんじゃねぇの?」
康平は健太に言ったが、彼の欠点を知っていた。
どうでもいい事は器用にこなせるが、肝心な事は消極的になってしまうのだ。