臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 三キロ程度のジョギングだった。朝走るのは初めての事だったので、康平は意外な程疲労を感じていた。


 家に戻った後急いでシャワーを浴び、朝食と歯磨き、今日使う教科書の入れ替え等、いつもの通学前のノルマをこなしていく。


 家から駅に向かう途中、康平は健太と出くわした。

 お互い、『走る』という単語を避けながら話をする。健太が先に口を開く。

「……俺さぁ、今気になってるコがいるんだよ」

「えっ?」

「内海綾香ってコなんだけどな。同じクラスで、ハーフみたいで結構可愛いんだ」

「お前は俺より面白いし明るいムードを作れるから、お前次第でうまくいくんじゃねぇの?」

 康平は健太に言ったが、彼の欠点を知っていた。

 どうでもいい事は器用にこなせるが、肝心な事は消極的になってしまうのだ。

< 83 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop