臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 この学校には二つの体育館がある。第一体育館は普段体育に使われ、室内で練習する殆どの部活もそこで行われている。

 第二体育館は第一体育館の四分の一程度の大きさで授業では使われず、放課後だけ女子バスケ部専用の練習場所になっていた。

 その中には、バスケ部で使用していない中途半端な空きスペースがあった。

 梅田が全員に言った。

「お前らはここで交代で練習に来る。まず有馬と白鳥はここに残れ。片桐と高田は練習場でシャドーをしていろ。有馬はミットが終わったら片桐を呼びに行け。分かったな?」

「ハイ!」


 全員が返事をして、康平と健太は練習場に戻っていった。

 戻った二人は鏡の前で練習を再開したが、四人の時よりも場所に余裕が出来て動き易くなっていた。

 それから四ラウンドが終わると、有馬が練習場の中へ戻った。

「健太、次はお前だ。頑張れよ」

 有馬は、荒い息遣いのまま意味深な一言を発し、健太と交代した。

 健太は第二体育館へ走っていった。

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