臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 ブザーが鳴り、構えだけという四人にとって退屈な練習が始まった。

 ところが、いざ始まると一年生達の下半身が辛くなっていった。

 前の足は少し曲げなければならず、後ろ足の踵は上げなければならないからだ。

 ラウンドが進むにつれて、康平達から汗が滴り落ちる。


 近々先輩達の試合がある為、梅田は殆どの時間上級生達を見ているが、時折一年生にもチェックが入る。

 首の角度や手の位置も、崩れてくると竹刀で軽く修正する。


 最後のラウンドが終わった時、一年生全員の膝とふくらはぎが笑っている状態だった。

「一年生は、柔軟体操をしたら帰っていいぞ」

 梅田に言われた四人は、最後の力を振り絞って返事をした。

「はい!」



 着替えが終わり、先に校門を出た四人の一年生は駅に向かって一緒に歩いていた。康平と健太以外の二人、有馬と白鳥も電車通学だった。

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