臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平は、頬にザラザラした感触で目が覚めた。

 梅田が、康平の頬に数学の教科書を当てていたのだ。

 ハッと我に返った康平は、体を硬直させて下を向いた。


「俺の授業で寝るたぁ、いい度胸だなぁ……おい」

 梅田はそう言って、教科書で康平の頭を叩く。


 バーン!

 凄い音が教室中に鳴り響く。

 クラスメートは、全員見てみぬフリをしている。

 しかしその後、梅田は何事もなかったように授業を進めた。



 授業が終わり、前の席に座っている亜樹が康平に話し掛けた。

「悲惨だよねぇ。部活でも叩かれて、授業でも叩かれて……」

「え、何で知ってんの?」

「あたしの友達、部活でバスケやってるから、たまにバスケの練習を見に行ってるんだ」

「ゲッ! 亜樹には恥ずかしいトコばっか見せてんジャン」

 苦笑した康平に、亜樹は笑いながら否定した。

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