臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「ゴメンね。まだ彼女は部活で来れないみたいだから、三人で始めよっか」

 亜樹の一声で勉強が始まった。

 康平が苦手な数学の教科書を出した時、亜樹が彼に言った。

「康平、今は別の教科をやった方がいいと思うよ」

「何でだよ?」

「数学苦手なんでしょ! 最初にそれやっちゃうと、またマンガに逃避するよ。……たぶんだけど」

 亜樹がカラカっている様子でもなく、神妙な顔で話していたので康平は不思議と納得した。彼は、素直に好きな科目の生物から始める。


 一時間程勉強した時、再び亜樹が康平に話し掛けた。

「好きな科目なだけあって、勉強はかどってるね」

「え、何で知ってんのさ?」

「君、生物の授業を受けている時間だけは眠っていなかったからね」

 亜樹はクスっと笑った。

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