誇り高き
そこで、手紙は終わっていた。

「本当にお前は真っ直ぐな男だな」

私は、お前にそんなことを言ってもらえるほど、立派な人間じゃないよ。

優しくも綺麗でもない。

お前を無視していたのは、人と関わるのが嫌だっただけ。

お前が好きなのは、本当の私ではない。

お前が、好きなのは______


「この布………」

紅河は手紙を開いた時に落ちた布を拾った

何処か見覚えのある真っ白な手拭いの切れ端。

これは。

「まだ、持っていたのか………」

別れの時に返した手拭い。

その、切れ端。

これを私に渡してどうしろと言うのだか。

「………?」

よく見れば、何か縫ってある。

「く…すの、………小十郎、か」

ますますどうしろと言うのだ。

まったく。

大事なことは一つも話さない。

関係無いことはべらべらと喋って。

「何が、私の事を気になった、だ。私を監視する任務だったことくらい知っている」

里の長あたりにでも命じられたのだろう。

本当に。

任務に忠実な奴だ。

それも、掟の一つなのだから仕方が無いのかもしれないが。

それでも、少し自惚れてもいいのなら。








「私を好きだった、と言うのは本当かな」









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