誇り高き
早朝、土方に呼ばれた山崎は土方の部屋に訪れていた。
山崎に下されたのは新たな任務。
新撰組の大仕事になるであろうもの。
「________と言うわけで、山崎。お前は芸子に扮してくれ」
「わかりました」
「悪りぃな。他に頼める奴がいなくてよ」
「いえ。構いませんが」
任務は芸子に扮してとある倒幕派の協力者を調べること。
彼等の探索方法の十八番(おはこ)である。
「紅河が本調子だったら使えたんだがな」
相変わらず紅河の体調は回復しない。
それどころか、徐々に悪化しているようにも見える。
「沖田も嫌な咳をしてやがる。いくら言っても医者に行かねぇしよ」
子供じゃあるまいし、と土方がこぼす。
しかしその大きな子供は新撰組の中で一、ニの剣豪だ。
その二人が揃って使えなくなれば新撰組は大きな痛手を負ってしまう。
それに結成当時の仲間だ。
組がどうのこうのの以前に、心配なのだ。
「悪かったな、子供で」
「あんまり悩んでると禿げますよ?」
いきなり戸が開いて沖田と紅河が顔を覗かせる。
「………誰のせいで悩んでると思ってるんだ?」
低い声で土方が唸る。
「え?いい俳句が思いつかないからじゃないんですか?宝玉さん」
「総司ぃぃぃ!!」
にこにこと沖田笑っている。
紅河と山崎は耳を塞いだ。
「大体お前らがっ、何故ここにいる⁉︎部屋で臥てろっつたじゃねぇか!」
「えーだって、ねぇ?」
「いい加減飽きた」
ブチっと土方の中で何かが盛大な音を立てて切れた。
「いい歳して幼稚な事をほざくんじゃねぇよ!!」