誇り高き
翌日、新撰組の屯所では凄まじい叫び声が響いていた。
「ぐぁぁぁぁあああああ!!」
「ぎゃあぁぁぁ!!!!」
「喧しい。あのままだと白状する前に喉が潰れるぞ」
「意外としぶといですね。桝屋、でしたっけ?」
「古高俊太郎、だ。桝屋喜右衛門は偽名だろう」
いつにも増して屯所の気配がピリピリしている中、沖田と紅河の周りだけは至ってのほほんとした空気が漂っている。
「ふーん。でも凄いですね。あの土方さんが手こずる何て」
今日の昼、捕らえた古高俊太郎。
彼の店には沢山の倒幕派が出入りし、また沢山の武器も隠して保持していた。
京にいる長州藩士達の居場所、そして彼らが企てているであろう計画。
それらを知るため、現在古高は拷問にかけられている。
が、中々しぶとく白状しない。
段々と此方も焦ってきている。
「そうだな」
何度も聞こえてくる苦悶の声。
紅河の部屋がある離れは、比較的拷問の行われている蔵に近く、声がよく聞こえる。
非常に迷惑なことこの上ない。
荒木田の拷問も凄かった、と紅河は目を細めて思い出す。
あぁ、そう。
あれからもう、九ヶ月も経つのか。
時が流れるのは、早い。
本当に。
あと私の命も_________。
「紅河さん?」
急に静かになった紅河を心配して、沖田が覗き込む。
「どうしました?具合でも………」
「え?……ぁあ、心配はいらないよ。私よりも沖田の方が具合が悪そうに見えるが」
沖田の顔はいつにも増して青い。
「私も心配ありませんよ。至って元気ですから」
「そうか」
第三者の目から見れば、どちらも顔色が悪く具合が悪そうに見える。
だが、日頃から離れには人は滅多に来ないし(一部の幹部をのぞいて)、更に今日は近くで拷問も行われているから尚更人は寄り付かない。