誇り高き
仮に人が来たとしても、

「お前らこんな忙しい時に何いちゃついてんだ?」

と言う原田のような鈍感な奴しか来ない。

大体新撰組には人の体の心配を出来るような心を持った者は少ない。

唯一期待出来るのは、山南、井上、松原、斎藤ぐらいだ。

しかし、彼らは忙しいから離れになど来る余裕はない。

「別にいちゃついてなんていませんが。どんしたんです。原田さん」

「おう。お前らの見張りだ。ちゃんと休んでるか見張ってろって土方さんがよ」

がははと笑う原田。

紅河は頭が痛いと言うように頭を抑える。

「取り敢えず静かしてくれ」

原田の地声は頭に響く。

がんがんと叩かれるような痛みを起こすのだ。

「原田さん。暇なら甘味を買って来てください」

「うーん……そうしてやりてぇがよ。土方さんに怒られちまうしなぁ」

すまねぇな、とぼりぼり頭をかく原田。

「そろそろ拷問も終わるだろう。暫く悲鳴が聞こえてこない」

紅河は蔵の方を見ながら言った。

確かに先程から悲鳴は聞こえてこない。

「通りで静かだったんだな」

原田、お前のせいで十分五月蝿かった……と言う言葉を紅河は飲み込んだ。

言ったところで無駄なだけだ。

「どうせ吐くなら、もっと早く吐けば余計に苦しまずに済んだのに。何故わざわざ辛い目にあったんでしょうねぇ」

沖田は普段通りに見えて実はいらいらしていた一人だ。

どうせ白状するのだからもっと早く白状すればいいのに、と何度も繰り返していた。

「そろそろ伝令が来るんじゃねぇかな」

原田のその言葉と同時に

「伝令ー‼︎‼︎」

と隊士が駆け込んでくる。

「沖田組長、原田組長、紅河隊士長に伝言です。『至急、副長室に集合しろ』繰り返します。…………あ」

隊士が繰り返す必要はなかった。

伝令と隊士が来た時点で三人は副長室へ走り出していたからだ。









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