誇り高き
*
紅河配置は四国屋。
土方班だった。
今のところ、何の動きも感じられない。
長州はここにはいない。
そんな予感が紅河はしていた。
_______敵は池田屋では無いのではないか。
それは時間が経つにつれて、濃くなっていく。
いよいよ予感が確信に変わっていく。
「土方さん」
紅河が土方に声を掛けた。
「やはり、池田屋なのではないですか?」
これ以上待っていても時間の無駄だ。
土方も焦ってきているのか、普段以上に額に皺を寄せている。
もし、池田屋であった場合伝達係として山崎がかるはずなのだが、そちらも一向に来る気配がない。
「……行くか」
「行こうぜ、土方さん!!」
原田の言葉が後押しとなった。
「行こう!!」
一斉に池田屋に向けて走り出す。
浅葱の羽織翻し。
闇に浮かぶは白刃の光。
日も暮れ、星が瞬く中、道を照らすのは一本の松明の光のみ。
知らず知らずのうちに歩みが遅くなってしまう。
その中でただ一人。
紅河は屋根から屋根へ駆け抜ける。
一刻も早く池田屋へ。
軋む体を紅河はその思いで必死に支える。
隣の屋根に飛び移るたびに砕けそうになる膝。
それでも、歯を食いしばってやっと宿の明かりが見えてきた。
「池田屋………!」
ぐんと血の匂いが強くなる。
やはりこちらだったのだ。
その、池田屋の障子に映る幾つかの人影。
その中の一つに見慣れた背格好がいる。
‘‘………今日の戦いが終わったら、ちゃんと皆さんに言います。医者にもいきま
す”
あと少し、あと少しでいいから。
持ちこたえてくれ。
私が強くなったのは…………
もう、大切なものを失わないため
紅河配置は四国屋。
土方班だった。
今のところ、何の動きも感じられない。
長州はここにはいない。
そんな予感が紅河はしていた。
_______敵は池田屋では無いのではないか。
それは時間が経つにつれて、濃くなっていく。
いよいよ予感が確信に変わっていく。
「土方さん」
紅河が土方に声を掛けた。
「やはり、池田屋なのではないですか?」
これ以上待っていても時間の無駄だ。
土方も焦ってきているのか、普段以上に額に皺を寄せている。
もし、池田屋であった場合伝達係として山崎がかるはずなのだが、そちらも一向に来る気配がない。
「……行くか」
「行こうぜ、土方さん!!」
原田の言葉が後押しとなった。
「行こう!!」
一斉に池田屋に向けて走り出す。
浅葱の羽織翻し。
闇に浮かぶは白刃の光。
日も暮れ、星が瞬く中、道を照らすのは一本の松明の光のみ。
知らず知らずのうちに歩みが遅くなってしまう。
その中でただ一人。
紅河は屋根から屋根へ駆け抜ける。
一刻も早く池田屋へ。
軋む体を紅河はその思いで必死に支える。
隣の屋根に飛び移るたびに砕けそうになる膝。
それでも、歯を食いしばってやっと宿の明かりが見えてきた。
「池田屋………!」
ぐんと血の匂いが強くなる。
やはりこちらだったのだ。
その、池田屋の障子に映る幾つかの人影。
その中の一つに見慣れた背格好がいる。
‘‘………今日の戦いが終わったら、ちゃんと皆さんに言います。医者にもいきま
す”
あと少し、あと少しでいいから。
持ちこたえてくれ。
私が強くなったのは…………
もう、大切なものを失わないため