誇り高き





一方、池田屋。

「新撰組である!店主を出してもらいたいっ」

バンッと近藤が戸を開け大声で叫ぶ。

「は、はい。私でこざいますが……」

「御用改めである。邪魔立てすれば……斬る!」

近藤の言葉に、一斉に隊士達が刀を抜く。

「ひっ……!」

あまりの迫力に、店主は腰を抜かした。

這いつくばって、何とか階段に辿り着く。

「皆様……し、新撰組でございます!」

その店主の行動で、此処で会合が行われている事がわかった。

「御免!」

「ぎゃあっ」

事切れた店主を跨ぎ、近藤は二階へ駆け上がる。

「総司、コイッ」

「はい!」

程なくして二階からムッと血の匂いが漂ってきた。

階段からごろごろと人が落ちてくる。

それを一階に残った隊士達が迎え撃った。

「はっ!」

短い掛け声と共に永倉が鋭く突きを放つ。

「刺突技が得意なのは総司だけじゃねぇってよ!」

「その通り。新撰組八番隊組長藤堂平助、参るッ」

藤堂も袈裟がたけに斬る。

新撰組きっての剣豪の二人は瞬く間に長州藩士を斬っていく。

が。

「クソッ。斬っても斬っても減らねぇ。どうなってやがる」

圧倒的な戦力の差に、徐々に二人は追い詰められていく。

______まずい。動きが鈍くなってきた。

疲労で上手く体が動かない。

集中力もだんだんと薄くなってきた。

「土方さん達はまだか………!」

ちらりと永倉がすっかりと血で汚れた戸を見る。

それが、仇となった。

「八つぁん!前っ!!」

はっと永倉が息を呑む。

今にも己を切り裂かんと刃が目の前に迫っていた。




ガキィィーーーン。




相手の刃を受け止めた永倉の刀が根元から折れる。

ざくと親指と人差し指の間が裂けた。

痛い、と感じる間もなく体は勝手に動いた

折れた刀を捨て、脇差を抜くと鋭く刺す。

「はぁ……はぁ……。助かったぜ、平助………平助⁉︎」

振り返った永倉が見たのは、額を斬られて倒れる藤堂だった。

「平助ーーーーー!!」

夢中でとどめを刺そうとした長州藩士を斬る。

「死ぬなよ、平助………」

平助を守るために。

仲間を守るために。

永倉は萎えかけた気力を奮い立たせた。






「永倉新八の剣、味わせてやるよ!」








永倉は剣を構える。










「いざ、参るッ」









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