誇り高き











「死んで、それだけで済むと思うな。大馬鹿者が」







その声は頭上で聞こえた。

_____私は、死んでいない?

そろそろと目を開くと、幾つもの刀を受け止める紅河の姿があった。

大きく肩で息を切らし、それでも必死に刀を抑えている。

ギリギリと紅河は歯をくいしばる。

全力で全ての刀を押し返した。

刀を構えながらギロリと沖田を睨む。

紅河はこれまでにないほど怒っていた。

「すみま……せん…」

力のない声で謝ると、更に紅河から怒気が立ち昇った。

先程よりも怒らしてしまったようだ。

「………さっさとかかってこい」


最早沖田には目もくれず、敵方に言い放つ

「仇討ちは、私を倒してからでも遅くはあるまいよ」

くいっくいっと挑発するように剣先を動かす。

先程の威勢はどこえやら。

長州藩士達は震え出した。

「あ、あ………お前……」

「お、鬼だ。新撰組の……」

「白い……鬼」

女に向かって鬼などとよく言えるな。

紅河は凄絶に微笑む。

「臆病者が。それで仇討ちなどとよく言えたものだ」

斬_____。

真っ赤な華弁。

紅河は次から次へと華弁を散らしていく。

それはまるで、舞い散る紅の華弁の中で舞を舞っているようであった。

「綺麗、だ……」

それはあまりに凄惨な光景であるにも関わらず、とても美しく沖田の瞳に映った。




ドサッ





最後の一人が倒れる。

紅河は刀に付いた血を払うと、丁寧に懐紙で拭った。

刀を納めて振り返る。

彼女の純白の白髪は、真っ赤に染まっていた。

険しい顔で紅河は沖田のそばに膝をつく。

「血を吐いたのか」
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