誇り高き

ごめん。

気付けなくて。

何よりも大切な貴方を守ることが出来なくて。




「別に、さぼっていたわけではないよ。………つか…山崎は、山崎丞はどこにいる」

あれは、夢であったと信じたい。

「………っ…」

何故、皆暗い顔をする?

「…………正直に、言って。頼む」

「山崎は……監察方山崎丞は、池田屋へ向かう道で何者かによって殺されていたッ………」

「そうか………」

夢じゃ、なかったのか。

莵毬は、死んだのか。

「遺体を……見るか……?」

やめて。

そんな痛ましい目で私を見るな。

「紅河さん。大丈夫ですか」

大丈夫?

私は大丈夫でないように見えるのか。

「見る」

ふらつきながら紅河は立ち上がる。

それを見て支えようとした沖田の手を、紅河は払いのけた。

「場所は……?私一人で行く」

「山崎の部屋に」




紅河は真っ直ぐ前を見ながら、しかし瞳には何も写っていなかった。

放心状態で山崎の部屋へたどり着く。

「莵毬………」

そっと、顔を覆った布を剥ぐ。

真っ白な血の気のない顔。

それは、嘘も偽りもなく、死んでいることを明確に表していた。

「莵毬」

ぎゅっと莵毬の腕を握る。

「莵毬………ごめんなさい」

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