誇り高き
貴方を守ることが出来なくて。

何も出来なくて。

ごめん。

「ごめん」

ひたすら紅河は謝罪の言葉を繰り返す。

「ごめん………ごめん……」

貴方の温かい手も言葉も。

もう、何一つない。

どうか、守ることのできなかった私を許してほしい。

何も気付けなかった愚かな私を。

「………そこに、いるのだろう。兄上」

______もう、逃げることさえ許されない

覚悟を、決めなければならない。

「久しぶりだね。_______紅河」

屋根裏から降りてきた一人の男。

紅河は莵毬を守るように立つ。

「莵毬を殺したのは………」

「私だよ」

にっこりと微笑んで彼は言う。

「莵毬は掟を破ったからね。掟の執行者として、掟を破った者は処罰しなければならない。そうだろう?我が妹」

紅河の白い髪に、唇を落としながら彼は続ける。

「お陰で我が一族は嫌われ者だ。さて、そこを退いてくれるかな、紅河。もう一人しか残っていない家族と、争いたくないだろう」

「………莵毬を、どうするつもりだ」

「どうするも何も。彼は死んでいるからね………あぁ、それとも。彼はまだ生きているのかな」

「いや。………殺したのは、兄上なのだから。確実に……死んでいる」

紅河の兄は、髪を離すと今度は紅河の顎を上にあげた。

紅河の瞳を、じっと覗き込む。

「どうだろうね。君は昔から嘘が上手いから。さぁ、退いて。私も君に手荒な真似をしたくないんだ」

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