誇り高き
「頼みます、先生。急がんと危ないかもしれないんです」

「わかった。君の願いだ。すぐに行くよ。場所は何処だね?」

「うちの店や」







松本は淡々と治療を続けた。

「熱がかなり高い。ここから三日が峠だろう。それと、彼女の体は_________だ」

その言葉を聞いた宇治の顔が僅かに歪む。

だが、それについては一切触れなかった。

「ありがとうございました」

「いいや、君の頼みだからね。また何かあったら呼んでくれ。出来る限りのことはするから」

松本が帰ってからも、ずっと宇治は紅河のそばにいた。

________どうか、熱が下がりますように





宇治の願いが通じたのか、紅河は峠を越えたのだった。




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