誇り高き
「すべて、何もかも予定通りだ」
菁河は屋根の上に立って、辺りを見回す。
「何一つ、狂いはないよ」
「私の紅河は、もう少し面白くしてくれると思ったのに…………あっさり壊れた。つまらないな」
「ひどくつまらない。……………君もそう思うだろう?
____________________________莵毬」
菁河の背後に控える人影が、ぴくりと動いた。
「……貴方は、自分の妹を何だと思っているんです」
身を絞るような声に、菁河は嘲笑を浮かべた。
「実に有能な駒だね。君なんかよりもよっぽど。ただ、まだ完成していない。完璧じゃないんだよ。だから、完成したら迎えに行こうか。きっと彼女は此方に来る」
それとも、なんて言って欲しかった?
菁河は視線だけ背後に向けた。
何よりも大切な存在だって。
そう言ったほうが良かったかな?
菁河の視線の鋭さが増した。
二回もあの子の心を壊しておいて、君がそんなことを言う権利はない。
あの子は君のものじゃない。
私の一手なんだよ。
重要なね。
影はやるせなく、身を震わすことしかできない。
「‘‘山崎丞”は死んだんだ。今の君は、あの子のために、新撰組のために動くことは出来ないよ」
もう下がっていい。
影を下がらして、菁河は一人呟いた。
「………誰にも、私に抗いきれないのだね………」
ひどくつまらない。
それを変えれるのは、紅河しかいるまい。
だからこそ。
誰にもやるものか__________。