誇り高き
『別に、憎くはないけれど。兄上がそう命ずるならば』
ぽつんと言った、紅河の言葉。
感情を凍りつかせていた紅河は、いつもぽつん、ぽつんと言葉を発した。
でも、わずかに情は残っていたのかもしれない。
彼女は、小十郎を隠したから。
紅河が新撰組に入るまで、小十郎の存在を知らなかった。
それが、紅河に残っていた最後の情。
紅河の情は人が死ぬたびに、殺すたびに少しずつ欠けていった。
そして、最後は自分で捨てた。
もう、紅河に本当の心はない。
心は菁河に砕かれてばらばら。
哀しみも愛しみも。
どこかに散らばっていってしまった。
ねぇ、紅河。
君はあと何回立ち上がれる?
「……例え、紅河さんが嘘をついていたとしても。仲間だと思ってなかったとしても。私は、沖田総司個人として紅河さんを信じます」
「俺も同意だ」