誇り高き
「ゴホッゴホッ……ゴボッ!……ハァハァ」
菁河が去った後、沖田は激しく咳き込んで屈み込んだ。
「総司!大丈夫か?」
背中をさする斎藤の手を払って、沖田は立ち上がる。
「すみません。大丈夫ですよ」
暗闇でよかった。
沖田はばれないようにほっと息を吐いた。
暗い闇のおかげで、手についた血はばれない。
でもきっと、一さんは鋭いから気付かれる
私は、紅河さんほど誤魔化すのは上手くないから。
「総司。……そろそろ俺たちに話してくれないか?」
びくっと沖田の背が揺れた。
「何を……ですか?」
「その咳のことだ。………ただの席じゃないだろう」
ほらね、気付かれてる。
「……紅河さんと、約束したんです。当の紅河さんが、どこかに行ってしまいましたけど。………だから、話すのは紅河さんが先です」
「………そうか」
「ねぇ、斎藤さん……」
「………?」
何も、斎藤さんは言わないけれど。
本当は。
本当は……。
「紅河さんの行方、知ってるんじゃないですか?」
一瞬、斎藤の目が大きく開かれる。
暫く、斎藤と沖田は見つめ合っていた。
先に、斎藤が目を背ける。
「斎藤さん……」
「………そうだ。知っている」