誇り高き
数日前に屯所にきた医師。
松本良順。
彼が言っていたのだ。
『先日白い髪の美しい女性を治療したが、彼女は噂の新撰組の白い鬼ではないのかね?』
皆が息を飲んだ。
『彼女の名は、分かりますか?』
『確か……紅河と呼ばれていたかな』
『紅河⁈あいつはどこにいた?』
土方が怒鳴った時、松本がバンッと畳を叩いた。
『彼女は君達の仲間なのだね?』
有無を言わせない口調。
松本の目が鋭く光る。
『言わせてもらうが、君達は彼女にどんな無茶をさせてきたんだ?
あんなぼろぼろな体は見たことがない。
もう、彼女の体は壊れかけてる』
『えっ……?』
紅河の体は壊れかけている?
体調が悪かったのはそのせいなのか?
なぜ、紅河は何も言ってくれなかったのだろう。
何故、自分達は気づかなかったのだろう。
『彼女は……どこに居ますか?』
しばらく松本は黙った。
『詳しくは、言えないが……彼女の懇意の店だそうだ』
その時、斎藤が目を見開いたのを沖田は見た。
きっと、斎藤さんは何かを知っている。
沖田の勘はそう告げたのだ。