誇り高き
「そう、ですか……。場所は……言えませんよね」
はははっ、と沖田は乾いた笑い声を上げる
「総司」
「紅河さん、しっかり休んでますかねー。逆に新撰組にいないほうが良かったのかもしれないですね。
休めませんし」
「総司!」
がしっと斎藤が、沖田を掴んだ。
はっ、と沖田が目を見開く。
そして、自嘲の笑みを浮かべた。
「すみません………」
「いや、心配なんだろう?」
「心配ない、わけないじゃないですか」
沖田の顔が僅かに歪む。
「ただ………」
「ただ………紅河さんの事を考えると、落ち着いていられなくて。………紅河さんは、私を助けてくれたのに……私は彼女の為に何も出来ていないんです」
今思えば。
紅河さんは本当に沢山の事をしてくれた。
ならば、自分は何をした?
………結局自分は、彼女を頼っていただけだった。
自分は、自分の事に精一杯で。
彼女の事を何も知らない。
そのことが、何よりも情けなくて悔しい。
「……そうだな。俺逹は何も出来なかった。何も知らない」
苦しみも。
悲しみも。
彼女は何も明かさなかった。
自分達が、無理矢理でも聞き出せば良かったのだろうか。
………分からない。
あの日々も、今も。
僅かに残せたものと言えば。
頼りない、“約束”だけ。
本当に、残せたかも分からない。
微風でも流れてしまうような、約束。
ただ、それだけ。
果たして、自分はその約束を守るべきなのか。