誇り高き
朝。
紅河の看病をしていた宇治は、戸の外の気配に気が付いた。
「何や、えらい気の早いお客はんですなぁ」
小さく呟いて、宇治は立ち上がった。
ゆっくりと階段を下りていくと、さっと戸が開かれる。
宇治は僅かに眉根を寄せた。
そな焦らんでも、何も逃げやせんのになぁ
「宇治」
「斎藤はん。お久しぶりですなぁ。まぁまずはぶぶ漬けでも食べてください」
要するに、とっととお帰りくださいということなんやけれども。
「……いきなり来たこと、申し訳ない」
そう。
分かっているなら。
宇治の目が鋭く光る。
_____試すまで。
「今さら来といてあんさんら、何の用ですの?」
「紅河さんとの約束を、果たしに」
そう答えた色白の男。
この男が、沖田総司か……。
「それにしては、随分と来るのが遅かったようですなぁ。……その程度の約束だったとゆうなら、お帰り下さい」
紅河が、命を賭けてでも守ろうとしたものに値するのか。
その基準に達しない限り、宇治は彼らを紅河に会わせるつもりはなかった。
それに………紅河はまだ目を覚まさない。
もしかしたら、ずっと目を覚まさないかもしれない。
少なくとも、彼女の目を覚まさせるのは自分じゃない。
宇治はそのことをわかっていた。