誇り高き

「お願い…お願いですから……黙って、消えないで下さい……」

沖田も紅河も互いの顔は見えない。

だから沖田は、紅河が切ない微笑みを浮かべているのに気付かなかった。

「沖田は……私が居なくなっても………私を忘れないか……?」

「何、言ってるんですか。……こんなに大切なのに……仲間なのに…忘れるわけないじゃないですか」

「そう、か。……沖田、一つ頼みごと」

「何ですか……?」

ひゅっと紅河は息を吸った。

これが、最後。

「私を、忘れないでくれ」

「……一生の別れみたいに。何です?」

……別れだよ、一生の。

もう、後戻りはできないから。

「だから、死ぬな」

死んだら、お前の中で生きる私も死んでしまうから。

「……っ私は、労咳だったんです。不治の病、何です」

「新撰組一番隊組長が、労咳を恐れるのか。病に、負けるのか」

焚きつけるように。

沖田の生きる執念が燃えるように。

彼らが生きてくれなければ、意味がない。

「………負けません。絶対に」









「絶対に、生きます」








どうか、どうか。



私がこの世から居なくなっても、彼らが生きていけますように。











さあ、別れを告げよう。






















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