誇り高き




「紅河さん……?」

紅河は沖田に微笑む。

そして、ぽんと首筋に手刀を落とした。






沈みゆく、意識の中で。

冷たい雫が、頬に落ちた。





一瞬だけ。

意識が浮上する。

だから、聞こえた。





















「さようなら」












聞き返すことも、紅河を引き止めることも出来ずに。




沖田の意識は沈んでいく。





“ああ、私は結局。何も出来ない”












力を失って倒れた沖田を、紅河が丁寧に布団に寝かす。

それから、静かに部屋をでた。










「置いていきはりますの?」

「宇治……」

「置いて、いきはりますの?」

「………」

紅河は何も言えない。

置いて、行くわけではない。

私が、戻るだけ。

彼らが、前に進むだけ。

ただ、距離が開くだけ。

「うちは紅河はんが決めたことに、何も言いませよ。ただ、紅河はんを支えるだけや」

「……いつも、助かってるよ。ありがとう」

「礼を言われるために、やっているわけやないからなぁ」

「それでも、助かってる。感謝しているよ」

「ほんならこれは、餞別にしときましょ」

宇治が取り出したのは、新しい金の首輪。

前のは、粉々になってしまったから。

「……本当に、宇治は気がきくな…」

首輪を付け、ぱちんと留め金を留める。

新しいそれは、前のものよりも合っているきがした。









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