誇り高き
禁門の変ー後ー
その日、京が。
真っ赤に、真っ赤に染まった。
「久坂が見当たらない?」
振り向いた紅河は、眉根を寄せた。
「あぁ。どこにもいない」
珍しく、高杉の顔にも焦りが見える。
今回の計画で、久坂はかなり重要なのだが。
「まあ、いい。後で回収しよう」
死にさえしなければ。
どうとでもなる。
びゅうっ____強い風が、紅河の伸びた髪を乱す。
紅河は海を越えた彼方を見つめ、目を細めた。
「兄上のことだ。こちらが何か企んでいることぐらい、察しているだろう」
そう、彼方では菁河が同じくこちらを見ていた。
「これが、始まりだ」
さあ、始めようじゃないか。
くすくすと紅河は笑うと、すらりと刀を抜く。
勢い良く振り下ろしたそれは、びゅっ____と音を立てて空気を切り裂く。
何を斬ったのか、何が見えていたのか。
それは紅河にしかわからない。
けれど、それを境にこの国は変わる。
確かな合図。
「「あぁ、楽しいな」」
狂気に染まった兄妹は、狂ったように笑う。
くすくすくす………
くすくすくす………
小さな歯車が、カタリコトリ。
ゆっくりと回り始める。
それはやがて、たくさんの歯車を巻き込んで。
大きな何かを、動かし始める。