誇り高き
「そうだ、もうお終いだ」
夢のようだった。
すごい速さで、時間は過ぎ去っていった。
“儚い”という字は、なぜ人の夢と書くのだろう。
ああ、実に言い得ている。
まさしく、そうだったじゃないか。
何とも儚く、呆気なく終わろうとしている俺の夢。
「誰かが……継いでくれるかな…。俺の夢……」
俺のしてきたことの意味を。
誰でもいいから、伝えてくれるといい。
でもその前に。
俺の夢が終わってしまったらどうしようもないか。
くすりと笑って、俺は着物の前をはだける。
くすくすくす。
変だ。
おかしくもないのに、笑いが止まらない。
「……ックク、」
「……クククッ……アハハハハハッ」
壊れたように、笑って。
笑って、笑って。
空っぽな俺の中に、笑い声が響き続ける。
何とも、空虚な笑い声が。
アハハハハハ、アハハハハハ…………
何とも滑稽じゃないか。
乾いた地が水を貪り吸い上げるように。
たくさんの学問を吸収してきたのに。
中身はこんなにも空っぽだったなんて。
死ぬ間際まで、それに気づかなかっただなんて。
滑稽すぎる。
「ハハッ……ハ……ハ………ぁ」
そして、虚しい。
思えば、松陰先生を失った時から。
俺は、空っぽだったのかもしれない。
ただ、死に向かって、駆けていただけなのかもしれない。