誇り高き










「お前の志しは…………もう果たせたのか?そんなもので果たせる、志しだったのか?」













ツキリ。

ああ、胸が痛む。

逃げるのかと、立ち止まるのかと。







「俺は、お前みたいに器用な奴じゃない。これ以上は、出来ねぇよ」



「本当に、そう思っているのか?」

「俺は、何でも持っていたお前とは違う!貧乏の、医者の、跡取りだったんだ!」





「お前は………」



風にかき消されそうなほど小さな声で、高杉は呟く。




「お前は………」





「………高杉……?」





静かな、高杉の顔。


そこに浮かぶ、確かな怒り。




「いつまで悲劇の役者でいるつもりだっ!」




彼は、久坂以上に悲劇の者を知っていた。

生まれたとこで背負ってしまった運命。

なのに、それに抗い続ける者がいることを知っていた。

そうやって、必死に生きている者を知っているからこそ。

高杉は久坂が許せなかった。




「お前よりも、重く苦しいものを背負って、命をかけて抗い続けている奴だっている。お前のそれは、唯の甘えだ」




『「俺は、あいつの為に死ねても。生きることはできない」






「誰も彼も。最期に辿り着く先は、死なんだ」』







間近で死を見つめながら、懸命に生と死の狭間で踏み止まっている者達。


生きたくても、生きたくても。

それは“出来ない”。


けれど、その“出来ない”は久坂の“出来ない”とは違う。





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