誇り高き


どんなに歩んでも、闇が広がってるだけなのに。

いつか光の下に辿り着くのではないかと、愚かな期待を抱いて。

傷だらけになりながらも、前に進み続ける。

もう、そうするしかないから。

それしか、出来ないから。



「未来を…………変えたくはないか?」


本来あるべきだった、正しい未来へ。

もう、終わらせよう。

悪夢みたいな未来(いま)を。





「…………俺は……っ!」



躊躇う久坂に、高杉が怒鳴った。




「何かを成そうすることが、お前の至誠じゃなかったのか!久坂!」





「俺の、至誠は………」




“『大事なのは………』”




「松陰……先生っ…」


呻くような、久坂の言葉。


「………いつまで死人に囚われている」



「何だと……?」




「とうに吉田松陰は死んだ。亡き者にいつまで頼り続けるつもりだ」

「貴様ッ!」


久坂はカッとして紅河に掴みかかる。

何故か紅河はそれを避けずに、地面に倒れる。

さらに馬乗りになって、殴ろうとする久坂の顔を見つめた。

「………ッ…!」

拳を振り上げたまま固まる久坂。

紅河はついと、目を細める。

「どうした。殴らないのか?」

「……ッ…くそっ」


だらりと力なく降ろされた拳。

久坂はふらりと紅河の腕から降りる。

圧力から解放された紅河は、体をくの字に曲げて咳き込んだ。

「げほっ、げほっ」

「……おい」









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