誇り高き


一拍おいて、浅葱の狼達が飛び出してきた。

「紅河さん……」

沖田が呆然と呟く。

両者の間にピリピリとした緊張が走る。






「何で、紅河さんが久坂玄瑞といるんですか……」










「何故だと思う?」









「裏切った、のか……?」






「そんなっ。そんなわけないですよ。だって……っ、だって紅河さんは……っ









仲間じゃないですか!」




必死に言い募る沖田。



「ね、紅河さん。そうですよね?」



ああ、心が痛い。


こんな感情、要らないのに。


とうの昔に、棄てたはずなのに。



「お前は、私を何だと思っている?いつ私が、裏切らないと言った?」


突き放したくない。

痛くて、痛くて。

心がほたほたと涙を零す。


「……いつ、私が仲間だと言った?」







「…………え?」




震える声で、沖田が言う。





「いま、何……て……?」








何度も、言わせるな。

聞こえただろう、沖田。

耳をそらすな。





目に見える、聞こえる“真実”から。




それを、信じろ。



何があっても、それは変わらない真実なのだから。





私が裏切り者だと言う、真実だから。





黙って、紅河が沖田を見つめれば。

沖田の瞳が昏い色に染まっていく。




哀しみとか、怒りとか。



昏い、昏い感情。









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