誇り高き
「そう、だったんですね。じゃあ、ずっと騙してたんですね。全て、嘘だったんだ」
そうだよ。
そう言いたいのに、言わなければいけないのに。
声が出ない。
だって、全て嘘なわけない。
あの、日々が嘘だなんて。
ちゃんと、本当の日だってあったのだから。
_______『知れば迷い 知らねば迷わぬ 恋の道………え、これ土方さんの筆跡ですよね』
_______『………ああ、だろうな……くくっ』
_______『ほ、豊玉発句集って…っ、あははははっ』
全て、嘘なんて。
それこそ、嘘だよ。
それでも、私は。
「……っそうだよ」
掠れた声でも、嘘を付く。
ずっと、最期まで騙し続ける。
それが、私の選んだ道。
「なら、斬らないと。私が斬りますよ」
すらりと刀を抜く沖田。
「お前に、私が斬れるのならばな」
「斬れますよ。大嘘付きの、裏切り者の紅河さんならね」
「……ほう?」
次の瞬間、沖田の刀が弾け飛んだ。
「……なっ!?」
凄まじい速さで抜刀した紅河。
刀を沖田の眉間に突き付けて、紅河はふっと笑った。
「そんな震える手で、私が斬れると?随分と舐められたものだな」
「あ……」
死ぬ。
沖田は直感した。
紅河は、笑っている。
だが、殺す気だ。
「私のことの何を知って、そう言えるのか。至って謎だな。素性の分からない者を、良く仲間と言える」