誇り高き
「私は、恨んでないよ」
唐突に、紅河が言った。
思わず反応してしまいそうになって、莵毬は自分を抑え込んだ。
「私は、自分で望んで、この道を歩いた。後悔も、傷も。全て、自分で背負えるよ」
私の代わりに、苦しまなくていいと。
彼女は、全てを見とうして。
分かっていて、言うのだろう。
そんなこと、しなくていいのだと。
違う。
俺は心の中で呻いた。
俺は、そんな綺麗な人間じゃない。
自分の罪悪感を無くすために、彼女の苦しみを利用しているのだ。
だのに。
「すまない」
彼女は、声を震わせて謝罪する。
「すまない……っ」
それは、何の謝罪なのだろうか。
「……私は、背負わせてしまっていることに。謝らないと、保てない。………それが、一層傷を負わせるのだとしても」
小さくなってしまった背を、さらに縮めて。
謝罪を繰り返す。
嗚呼、どうして。
こんな不器用にしか、生きられないんだろう。
生きることは、余りにも難しかった。
もっと楽なことは、山ほどあった。
けれども、一番険しい道を歩んでいる。
敵だと思っていたものが、同志だった。
同志だと思っていたものが、敵だった。