誇り高き
芹沢鴨
杯に映る小さな月。
風に吹かれ、ゆらゆらと揺れる其れは己の心の迷いを表しているようだ。
「儂はどうすればいい?」
『貴方は貴方の思うまま進めばいい』
蘇る声が心を掻き乱す。
やめろやめろやめろ。
耳を塞いでも、声は蘇ってくる。
『貴方は筆頭局長なのですから』
『隊のために鬼になるのでしょう』
ぱんっと頭の中で何かが弾けた。
「はっはっはっはっはっ。そうか……そうか……っ。儂はっ、儂は______」
芹沢は狂ったように笑い出す。
「………_______だ」
芹沢の呟きは、深く怪しい京の闇に飲み込まれていった。
「……_______なんで脆い、愚かな鬼」
屋根の上で呟いた人影。
「時は満ちた。______いざ、鬼退治へ」
その人影は身を翻すと闇に消えた。