誇り高き

さて、新見は。

「何、二人とも認めてるなら俺も同じだ」

その言葉を聞いた瞬間。

土方はにやりと笑った。

「成る程。ならば新見錦。局中法度に背いた事により、切腹を命じる」

「は?」

新見は全く理解できなかった。

「待てっ。土方君、山南君。何故私が切腹しなければならない!いったい局中法度とは何だ!!」

「ついさっき、貴方が認めたものですよ」

山南が静かな声で新見を追い詰める。

「そんな大事な事を酒のある場で話すべきではないだろう!!」

「武士ならぐちぐち言ってねぇで、潔く切腹したらどうだ」

「な、なら証拠を出せっ。俺がその法度に背いた証拠はあるのかっ?」

「‘‘お前の身請けもしてやろう。何、勘定方を脅して金を出させれば良いのだ。今宵もそうして、飲んでいるのだから”」

不意に新見の背後で低い声がした。

「玉依⁈お前、裏切ったな!!」

「裏切るも何もありまへん。私は元からこっち側どす」

「おのれぇぇ!」

新見は刀を引き抜くと、紅河に向かって振り下ろした。

カキーン

甲高い音がして、刃が止まる。

紅河が簪で刀を受け止めたのだ。

「女を敵に回すと怖いどすよ?」

紅河は沢山髪に刺さっている簪を一本抜くと、新見の手に突き刺した。

「________!!」

悲鳴をあげて、手を抑える新見は最早酔いなど覚めていた。

やっと、己の置かれている状況を理解する

____嗚呼、自分はもう新撰組に必要なくなったのだ。





すみません。

芹沢先生。

俺は、最後まで貴方に着いて行けなかった

先に、地獄で待っています。

せめて、最後は貴方の名に恥じぬよう武士らしく死ましょう。






「________介錯はいらん。刀をくれ」

先程までの騒ぎが嘘の様に、新見は潔く死を受け入れた。

刀を渡す山南の手が震えている。

土方も唇を噛み締めた。



「さらばだ。武士として死ねることに誇りを持って。____ありがとう」





九月十三日。
新見錦、切腹により死去。



また一歩、芹沢暗殺に向け駒が進められた

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