誇り高き
新見の死から三日後。
壬生浪士組一同は、芹沢を連れ出し宴を開いていた。
ずっと沈んでいた芹沢も酒が入り、少し気分が上がっている様である。
久しぶりの笑顔を見せていた。
「芹沢さん。お酌しますよ」
そう言って、芹沢の杯に酒を注ぐ土方。
普段酌をする男でないだけに、芹沢も驚いていた。
「ほう。土方、君が酌をするとはな。明日は槍でも降るのか?」
「酌ぐらいしますよ」
不機嫌そうに言えば、芹沢は呵呵と笑った
「冗談だ」
渋い顔をしている土方の杯に芹沢は酒を注ぐ。
「なぁ、土方。後を頼むぜ」
酒を注いでいた土方の動きが止まった。
杯から酒が溢れて、ぽたぽたと床にしたる
「おいおい。何やってんだ」
芹沢は苦笑いで床に零れた酒を拭く。
「芹沢さん……」
呆然と呟く土方。
______芹沢は己の最期を知っているのか
仲間に殺される運命を。
そして、それを受け入れている?
「情けねぇ面しやがって。おめぇは鬼の土方歳三だろうが」
だからよ、土方______
芹沢は微笑った。
「____………皆を頼むぜ」
この日の夜。
暗殺は、土方、山南、沖田、原田の手によって行われた。
芹沢鴨は、土方と沖田の手にかかり死亡。
妾の梅とともに、あの世へ旅立った。
翌日、芹沢鴨とその側近達が殺されているのを隊士が発見。
しかし、真実を隠すため、暗殺は長州の仕業とされた。