誇り高き
飲めよあれよの大宴会。
祝宴とあって、皆顔が明るい。
あの鬼の土方でさえも、顔を和ませていた
「我々、新撰組の今後の活躍に向けて。
乾杯。皆、今日は好きなだけ飲んでくれ」
近藤は、新撰組が気に入ったらしい。
「新撰組……新撰組……」
紅河は何度か口の中で転がした。
新撰組、ね。
どうにも慣れない。
私は、壬生狼の方が好きだったな。
それに、壬生浪士組はありのままに彼等を表している気がして。
______芹沢さんは狼そのものだったな
ならば壬生狼の名は、芹沢鴨と共に去ったのだろう。
窓に身体をもたせかけ紅河は、遠くを見つめた。
暗闇の中に、ぽつぽつと灯りが灯っていて、何処か幻想的な風景。
「………さようなら」
誰に向けたわけでもなく、受け取る相手のない言葉は、京の町の闇に吸い込まれて消える。
「さようなら」
もう一度、呟いた。
幾分かすっきりした紅河は、部屋の中に目を向ける。
早くも原田が、得意の腹芸を始めていた
。
「すっかり出来上がっているな」
隣に来た斎藤が呆れて言う。
「そうですね。まぁ、早く潰れてくれた方が片付けが楽で良い」
ゆっくりと杯を傾けながら、薄く微笑う。
ここ数ヶ月で見慣れた光景。
けれども、こうして騒ぐのも悪くないと紅河は思う。
何よりも、祝いの酒は格段に美味だ。
「注ぐか?」
お猪口を持ち上げる斎藤。
普段は断る紅河も今日は杯を差し出した。
お返しに、斎藤の杯にも酒を注ぎながら紅河はくすくすと笑った。
「どうした?」
「いや………楽しいな、と思って」
思いがけない紅河の言葉に、斎藤は目を見張った。