誇り高き
「楽しい……?」

「こうして、皆と酒を飲むのは、楽しいですよ」

紅河は目を細めて、どんちゃん騒ぎを見やる。

その口元は、三日月の形にかたどられていた。

仄かにに頬が赤く染まっている。

「そうか」

斎藤も微笑みを浮かべた。

「何だ、何だ。お前ら、そういう関係だったのか?!」

毎度のことながら、べろんべろんの原田が、此方を指差し大声で叫んでいる。

「何を言っている」

「そう言う関係とは、何のことです?」

斎藤は無表情で、紅河はにこりと笑い__目は笑っていない___訊ねた。

「え、えっとだなー」

二人の無言の殺気に当てられ、威勢の良かった原田は、急にまごまごし始めた。

「二人とも、折角の祝いの席で殺気出さないでくださいよ」

見兼ねた沖田が割って入る。

「総司、助かったぜ……」

原田がほっとして沖田に礼を言う。

「総司、随分と上機嫌だな」

「そりゃあね。近藤さんも喜んでますし」

近藤至上主義の沖田にとっては、近藤の喜びは自分の喜びに等しい。

普段より酒も進んだらしく、素面に見えて実はかなり酔っている。

沖田にしては珍しい事だ。

「幕府から正式に認めららたんだもんな。そりゃ嬉しいだろう」

うんうんと原田が頷く。

「新撰組、か。良い響きだ」

斎藤もかなり嬉しそうだ。

「………新撰組」

「何だ、紅河。気に入らねぇのか?新しい名は」

あまり嬉しくなさそうな紅河。

「気に入らない、わけではありませんよ。ただ、壬生浪士組と言う名が無くなるのが寂しいな、と思って」

皆が、あっという顔をした。

新しい名前に浮かれて気付かなかったが、確かにこれから壬生浪士組の名前は使われないだろう。

「確かにそう思うと寂しいな。壬生浪士組の名が無くなるのは惜しい」

「俺達の始まりだもんな」

「そうですね。………なら、こう捉えてはどうですか?」

沖田が右の人差し指を立てる。

< 76 / 211 >

この作品をシェア

pagetop