誇り高き
「壬生浪士組は、心の中にあると」

「心の中に、ある?」

「もう、この名は使えませんけど。だからこそ、心の中にあり続けるんです。消えませんよ。壬生浪士組は。私達の始まりなんですから」

おおっ、と周りがどよめいた。

「総司にしては良いこと言うじゃねぇか」

「原田さん。どういうことですか?」

沖田が笑みを浮かべながら訊ねる。

その笑みの黒いこと。

先程の紅河と良い勝負だ。

「え、えー……」

再び命の危機に瀕した原田。

自業自得でしかないのだが、ここまでくると哀れにも思えてくる。

「沖田さん。折角の祝いの席なんじゃなかったんですか?」

紅河が言われた言葉を其の儘沖田に返した

「………そうですね。この場では辞めておきます」

「紅河、お前は良い奴だぜ」

感謝の目を向ける原田。

「「何言ってるんですか?」」

それを紅河と沖田が声を合わせて一蹴した

「私はこの場では辞めておく、と言ったんですよ」

「沖田さん。私の分もお願いしますね」

沖田のみならず、紅河も実は深く根に持っていた。

「はい………」

原田は悄然と肩を落とす。

「んーまぁ佐之。頑張れ」

その肩を、永倉がぽんと叩いた。

「新八ぃぃ。そう言ってくれるのはお前だけだぜぇぇ」

原田が永倉に抱きつく。

「おうよ。俺だってあいつらに馬鹿馬鹿言われまくったんだぜ」

確かに馬鹿は言ったが、言いまくってはいない。

沖田と紅河はそう思った。

「男同士で抱き合うとは、実に暑苦しいな」

斎藤が重々しく言う。

「目に毒ですね」

紅河がぐさっと刺した。

「あーあ。芸妓さん達も引いちゃってますよ」

沖田が呆れて言う。

「何?……新八さんに佐之さん、そういう関係だったの?」

藤堂も引いた声で言う。

「何、藤堂君。寂しがることはないさ。私は残念ながら、君は範囲外だが、なかなか君は人気者だからね。その気になればすぐに相手が「武田さん。俺は男色家ではありませんから!」

「そんなに否定しなくたって良いじゃないか。………おや?紅河君。どこに行くんだい?」

さりげなく武田から離れようとしていた紅河は武田に見つかって渋々と振り向く。

なぜ離れようとしていたかと言うと、武田に狙われているからだ。

どうやら顔が好みだったらしい。

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