誇り高き
紅河が来るまでは、同じく秀麗な顔立ちをしている沖田を追いかけ回していた。

「………酒を取りに」

「わざわざ取りに行く必要はないよ。私が丁度酒を持っているからね。ほら、酌をするよ」

「いえ、結構です」

「遠慮はいらないよ」

いや、本当にいらない。

紅河は、ずりずりの後ずさる。

「武田さんは、どうぞあちらで飲んでいてください」

紅河は生理的にこの男が無理だった。

頼むからどっかに行ってくれ。

心の底から願っているのだが、思うようにはいってくれない。

「連れないなぁ。私と飲むのは嫌なのかい?」

もちろんだとも。

この上なく嫌だ。

が、出来る限りこの男と話を交わしたくない。

大体、この男に酌をしてもらっても酒が不味くなるだけだ。

………味は変わらないはずなのだが、実際そう感じてしまうのだから仕方が無い

とにかく、紅河は一刻も早くこの男から離れるため、打開策を考える。

沖田を生贄にとも考えていたのだが、それだと後が面倒臭くなる。

そんなのは、絶対ごめんで______…

「紅河君。そんなに無視しな「紅河」

武田の話を遮って、山崎が武田と紅河の間に割ってはいる。

「あぁ、山崎さん。お酌しますよ」

紅河は内心、_____よくやった、莵毬…と思いながらとぽとぽと酒を注ぐ。

「山崎君。私は紅河君と話をしていたんだよ。邪魔をしないでくれるか?」

「それは、済まへん。けど、どっから見ても会話してるように見えへんかったで」

それはそうだ。

武田は一人で話していふだけだったし、紅河はその話を全くもって聞いていなかった。

「しかしだな、山崎君。礼儀と言うものがあるではないか」

「武田さん。祝いの席でそな形苦しい話、よした方がええんちゃいます?皆、聞いとらんで?」

「私は君に言っているのだよ!!」

そんな言い合いをしている間に、紅河はそそくさと逃げている。

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