誇り高き
「相変わらず仲悪いなぁ、彼奴ら」

二人の言い合いをのんびりと見ながら藤堂が呟く。

そんな藤堂を紅河が睨んだ。

「藤堂さん。私を囮にして逃げましたね」

「いや………あははは」

笑って誤魔化す藤堂。

次に、紅河は永倉と原田を睨む。

「お、俺達もか?!」

「俺らは勝手な誤解を受けたんだぜ?」

「男色家、でしたっけ?」

「「断じて違う!!」」

「仲が良いのは結構ですが、少しは助けてくれても良かったのでは?」

要するに紅河は、武田から助けてくれたのが山崎だけだったことを根に持っているらしい。

「でも、あんな紅河さんが見れて面白かったですよ」

沖田がくすくすと笑いながら言う。

紅河は最早反論する気も起きず、溜息をついた。

「溜息をつくと、幸せが逃げますよ」

「一体誰のせいで……」

言いかけて紅河はやめた。

事の元凶は考えなくてもたった一人。

「文句なら武田さんに」

そう、武田だ。

「………いえ、文句はありませんね」

本当は大有りだが。

沖田の手のひらで、良いように踊らされている気がする紅河である。

いや、確実に踊らされているだろう。



「大体、君は紅河君の何なのだね⁈」

突如として、部屋に響き渡った武田の大声

どうやら、まだ武田と山崎は言い争いをしていたらしい。

「何にだ、と言われてもなぁ。強いて言うなら幼馴染かいな」

「………だからと言って、べったりし過ぎではないのか?家族でもあるまいに」

まぁまぁと周りの幹部たちが武田を宥めるが、酔っている武田は収まらない。

「武田さん」

紅河が静かに声をかけた。

「山崎さんは、私にとって家族の様なものですよ」

しん____と部屋の中が静まり返る。

「それは………」

「私は、幼い頃に家族を失いましたから。彼は、私のたった一人の家族ですよ」

微笑んでいるように見えて、彼女の口元は歪んでいた。

それを見た山崎は、殺気を込めた目で武田を睨む。

「………あぁ、雰囲気をすっかり壊してしまいま「紅河君!!」

近藤が勢いよく紅河の話を遮る。

「君には、私達仲間がいるぞ!山崎君だけではない。新撰組は皆家族だ!!!」

「え………と?」

紅河は戸惑った顔をした。



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