誇り高き
夢の中では、私は今だに無力な小さい子供のままだ。
「寝不足か?隈が出来てるぞ」
朝餉の時にそんな事を言われた。
私よりもよっぽど酷い隈が毎日出来ている土方に言われたのだから、相当酷いのだろう。
化粧で隠すべきか。
「最近寝れないんですよ」
正しくは、寝たくないから寝ないようにしている。
夢を見るから、寝たくないのだ。
「お前は大事な戦力だからな。倒れるんじゃねぇぞ」
彼は、鬼の様に見えて優しい人だから、心配してくれているのだろう。
「土方さんも、ですよ。私より隈が酷いですから」
「ふっ。お前までに心配されるとはな。…………少し休むか」
丁度、仕事が一段落ついたところだったらしい。
ずっと部屋に篭り切りだったから、彼の姿を見るのは久し振りの気がする。
「お前も休めよ。今日非番だろ」
そう、今日は非番だ。
ここ連日眠っていないお陰で疲労は限界に達していて、体は睡眠を取ることを求めている。
それでも紅河は、眠りたくない。
理由は単純。
夢を見るのだ。
その夢は、幼い頃の記憶が鮮明に蘇ってくる。
それが辛いのだ。
寝ている間は、無意識だからいつの間にか泣いていたり、朝起きると布団は乱れて体中汗をぐっしょりかいていたりする。
そのうち、どうしょうもなく心が重くなってきた。
朝からそれだから、一日中気分が鬱々としている。
けれど、それを悟られたくないから普段と変わらない振りをする。
それが余計に疲れさせる。
疲れが溜まってくると、うとうとした拍子に夢を見てしまう。
結局、堂々巡りだ。