誇り高き
夢を見る原因は分かっている。

この前の宴会だ。

『私達は家族だ。_____仲間だ』

あの近藤の言葉は、私の心の弱い部分に触れて。

ゆらゆらと心を揺らすのだ。

「……………か」

「こ…………か」

「……紅河!」

「………はい?」

振り向けば、眉毛を寄せた斎藤が立っていた。

「何ですか?」

「……………。いや、顔色が悪いな。休んだ方が良いぞ」

…………そんなに悪いのだろうか。

「先程、土方さんまでにも言われてしまいました」

「そうか。朝廷にも認められた事だし、これから忙しくなるだろう。休める時に休んでおけ」

休むという動作が疲れに繋がるのだ。

が、そんな事を言えるわけない。

「そうですね。……斎藤さん、先程何か言いかけたのでは?」

「いや、大したことではないからいい。それより、早く休め」

「………では、失礼します」

……本当はもう少し誰かと話をしたかった

気を紛らわしたかったのだが。

「あ………沖田さん」

猫と縁側一緒に日向ぼっこをしている。

彼の隣に腰掛けると、彼が猫の方を向いたまま言った。

「どうしたんですか?貴女から話しかけてくるなんて珍しい」

「そう、ですかね?」

言われてみれば確かに。

沖田に話しかけた事はあまりない。

どちらかと言うと、いつも彼の方から話しかけてくる。

「そうですよ」

私は猫を抱き上げる。

「………猫、好きなんですか?」

気持ち良さそうにごろごろと鳴く猫を見て、沖田は首を傾げた。

「どう、なんでしょうね?………好きなのかな」

こてんと首を傾げな沖田。

………日向ぼっこは程良く暖かく、眠気が襲ってくる。

大きく欠伸をすると、それにつられた様に猫も欠伸をした。

目を閉じてうつらうつらとしながら、沖田の話に耳を傾ける。

「………ですね。……って、紅河さん?寝ちゃいましたか」

丁度良い位置にあった沖田の肩を借りて、私は本格的に寝てしまった。






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