誇り高き
間者
「最近平和ですねー」
「良いことじゃねぇか」
「長州の奴らも大人しいからな」
「うーん………」
「どうしたんですか、藤堂君」
「なんかさー。平和なのは良いことなんだけどさ」
「私達も巡察、と言うより散歩になってますからね」
「………おい、巡察は気を引き締めてやれよ」
副長として見過ごせず、沖田の言葉につっこむ土方。
「あーつまんねぇんだよな」
「分かるぜ!何つーかな……暴れ足りねぇんだよな」
原田の言葉に同意を示す永倉。
「様するに、暇なんですよね」
沖田がさらっとまとめる。
「暇だからといって、私の部屋に集まるな」
あれから紅河は倒れて以来、度々寝込むようになった。
大体は一日寝れば良くなる。
周りはからは再三、医者に行けと言われているのだが本人に行く気配は無い。
更にもう一人。
最近、沖田が気になる咳をしている。
彼もまた、医者に行けと言われているのだか、その度にのらりくらりとかわしている。
そして、紅河が寝込むたびに壬生浪士組発足当時からの仲間達が、紅河の部屋に集まる事が最近では恒例になっていた。
「てめぇらそんなに暇なら俺の仕事を手伝え」
土方の言葉に皆がそっぽを向く。
「ったく。なら文句言うんじゃねぇよ。それに紅河と総司。お前等二人は早く医者に行ってこい」
「悪いが私は暇ではない」
「嫌ですよー。医者嫌いですし。あ、土方さんが豊玉節句集を音読してくれると言うなら、行ってもいいですが」
沖田が豊玉節句集、と言ったところで土方の額に深い皺が刻まれる。
「あ⁈何でお前があれを知ってるんだよ⁉︎」
「紅河さんから聞きました」